なでしこジャパン、最後まで直らなかった悪癖。世界と戦うために精神論以外にもある問題点 (4ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 試合後、高倉監督はなでしこジャパンに対する「気迫が感じられない」「勝負していない」といったマイナスな意見が噴出していることを受けて、「なかなか闘志が前面に出るタイプの選手が少ない中で、いろんな声がありましたが、選手はこの大会中、本当にすべてを懸けて戦っていた。その点に関してはたたえたい」と選手たちをねぎらった。

 闘志がないはずがない。それは試合後の選手たちを見ていればわかる。覚悟はしていても、オリンピック最後のホイッスルは、選手たちの気丈さを崩壊させた。一時同点弾を決めた田中は膝から崩れ落ち、岩渕真奈(アーセナル)はゆっくりとスピードを落とすと、終了とともに動きを止めたボールに触れた。それぞれに抱えていたものが目標とともに崩れ落ち、涙を溢れさせた。キャプテンの熊谷は現状を真正面から捉え、こう語った。

「チームとしてやれることはぶつけたつもりでいます。ただ、2019年のフランス・ワールドカップの負け方と今日の負け方を考えた時、自分たちがうまく支配できて、相手の嫌なプレーができていたか、怖いプレーができていたか、結果を残せたかというと......。これが今の世界との本当の差だと思います」

 そして、熊谷は声を詰まらせながら、こう言葉を絞り出した。

「これから世界で勝っていくために......、何をしていかなければいけないのか、もう一回考えるべきだし、うまいだけで勝てる相手ではない。自分たちのウィークな部分をどれだけ戦えるまでにしていくかが、日本女子サッカーの課題だと思います」

 闘志はあるが、それが見ている人には伝わらない。世界を制した2011年以降、常に結果を求められてきたなでしこジャパン。世代交代の波の中で、この期待値とイコールに持って行く力が及ばなかった。歯がゆく、もどかしくそして何よりも悔しい想いをベテランはしているはずだ。そして若手はこの悔しさが経験値となり、殻を破っていくための糧を得た。このオリンピックのすべてが必ず今後のなでしこジャパンの原動力になる。今はそう信じて前を向くしかないだろう。

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