最悪の出来だったU-24日本代表。それでも彼らは苦戦を勝ち切る要素を備えていた (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 緊迫の時間にもかかわらず、冗談を口にする余裕まであった。

「航が『1本は外してもいいですよ』って言ってくれたんで、ここって決めていたところに蹴り込んだ」と、ラスト4人目のキッカーを務めたキャプテンの吉田。遠藤にしてみれば、オイシイところを持っていかれた、といったところだったかもしれない。

 遠藤が笑って言う。

「本当は5番で決まるかなと思って、僕は5番に蹴りたいと言ったが、そこは予想が外れた。PK戦はそのくらい余裕があればいいんじゃないかと思う」

 こうした心理状態になれた時点で、勝利はほぼ手中にあったのだろう。

 森保監督も選手を頼もしげに見つめて言う。

「自分が決めてやるとキッカーに立候補してくれる選手の思いを大切にした。勇気を持って名乗りを上げてくれた、その気持ちがPK戦の勝利につながったと思う」

 災い転じて、ではないが、結果的に上昇機運でベスト4進出を決めた日本。スペインとの対戦が決まった準決勝へ向け、痛手を挙げるとすれば、DF冨安健洋を累積警告による出場停止で欠くことだろう。ニュージーランド戦でのDF酒井宏樹に続き、2試合連続で主力DFがいない戦いを強いられることになった。

 だが、ニュージーランド戦を前に、すでに"リーチ"がかかっていた選手が、日本には冨安を含めて5人もいた。それを考えれば、120分を戦いながら次戦出場停止を1人だけに抑えられたのは、悪くない結果だったとも言える。

 リーチがかかっていたひとり、ボランチの遠藤も「(イエローカードを)めっちゃ気にはしていた。ヘディング(の競り合い)に一番気をつけていた」。だが、「審判がよかったというか、しっかりボールへいき、正当なチャージであれば、あまりファールを取らなかった」。

 我慢が続く苦しい試合でも、ピッチ上の選手にはジャッジの傾向に注意を払う余裕もあった。PK戦へ向かう際の心持ち同様、心理的な余裕や落ち着きといったものが、最終的な勝利を引き寄せたのだろう。

 日本サッカー史上初の金メダル獲得まで、あと2試合。金色の頂が見えてきた。

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