U-24日本代表、決勝トーナメントのキーマン。「沈黙する切り札」の力が必要になる時がくる (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 幸いにして、チーム状態は良好だ。特に2列目は選手層が厚く、軸となるMF堂安律、MF久保建英を筆頭に、相馬、三好、旗手、前田と、タイプの異なる駒がそろっている。三笘には酷だが、ここまでは彼の不在が大きな痛手とはなっていない。

 だが、ここからの戦いはすべて一発勝負。拮抗した試合展開で1点を取るか取られるかが勝敗を分ける。

 しかも、中2日での連戦は、間違いなく選手たちの体に疲労をためている。好調に映る選手が、これから先も同じようなプレーを見せられるとは限らない。

 0-0のまま試合が動かない時。あるいは、相手にリードを許した時。試合の流れを変え、相手ゴールをこじ開けるためのさらなる武器が必要になる時がきっとくる。

「相手をひとり剥がすこと、ゴール前でのランニング、サイドでの仕掛けが僕の特徴。そこを出したい」

 三笘の価値は彼自身が語っているとおりだ。

 異次元とも言うべき昨季のプレーぶりを「Jリーグだからできたこと」と、冷ややかに見る向きもある。その側面があることは否定しない。

 だが、過去にこれほどの柔らかなテクニックと瞬間加速のスピードで、まるでゲームの世界のように相手DFを翻弄する選手がいなかったこともまた事実。従来の常識では計れないからこその期待が、そこにはある。

 川崎の同僚でもあったMF田中碧は決勝トーナメントを目前に、「最終的に勝てば何でもいい。PK戦でも大差でも、勝って先に進むことが大事」と言い、こう続けている。

「チームの力が問われる。スタメンでも途中交代でも、いろんなヒーローが生まれれば、より上のステージにいけるんじゃないかと感じている」

 ニュージーランドとの準々決勝。そのヒーローが三笘であれば、金メダル獲得の可能性はさらに高まるはずである。

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