なでしこジャパン、決勝トーナメントでのキープレーヤーは誰か。「化ける」候補の選手は2人いる (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・撮影 text&photo by Hayakusa Noriko

 準々決勝の相手は、優勝候補であるアメリカを3-0の完勝で破り、グループリーグを1位通過してきたスウェーデンだ。

 日本がここを突破するにはやはり"化けモノ"が必要だ。その可能性を秘めている2人の選手に注目したい。ひとりはイギリス戦でバックアップメンバーからスタメンを勝ち取った林穂之香(AIKフットボール)だ。大会前のキャンプから確実に調子を上げてきており、戦術理解度が高い。

 そして、日本を飛び出してスウェーデンでプレーしているこの半年で、対人感覚が磨かれつつあり、いい意味でボールへの執着心が粘り強い球際のプレーに反映されている。ミドルシュートを狙うか、縦パスか、ダイレクトにつなぐのか。瞬時に今のチームに必要なプレーを選択できる判断力を持っていることが、イギリス戦の前半で証明された。

 そしてもうひとりが、これもバックアップメンバーからチリ戦で途中出場を果たした木下桃香(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)。守備のテンポが崩れないチリ守備陣にテクニックで風穴を空けたおそるべき18歳だ。何度ブロックされようとシュート、ドリブル、パスと手法を変えながら確実にリズムを生み出した。

「彼女の才能はすばらしい。今後、なでしこを代表する選手になるはず」と岩渕も認める木下のプレー。わずかチリ戦では30分にも満たなかったが、十分に可能性を感じる出場時間だった。

 できることをやるだけではスウェーデンを倒せないだろう。しかし、ここを倒せば発足してから初めて高倉ジャパンは山場を越えることになり、最終日程までオリンピックを戦うことができる。

 チーム自体が化けることを望みたいが、まずは小さな"化けモノ"から広げていくのもアリだろう。残り90分でオリンピックを終えるのか、最後までメダルを争うのか。岩渕だけでなく、他の選手や違う角度からの勢いを合わせた相乗効果が表れることを願うばかりだ。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る