なでしこジャパン、決勝トーナメントでのキープレーヤーは誰か。「化ける」候補の選手は2人いる

  • 早草紀子●取材・文・撮影 text&photo by Hayakusa Noriko

 なでしこジャパンが苦しい戦いを続けている。最終戦、1−0でチリをギリギリ振り切って、なんとかグループE、Fの3位上位として決勝トーナメント進出を決めた。初戦のカナダ戦を引き分けたことで、この展開はおおよその見当がついたが、想像以上に厳しい戦いとなった。

それぞれの思いを持ってチリ戦を戦った岩渕真奈と田中美南それぞれの思いを持ってチリ戦を戦った岩渕真奈と田中美南 フタを開けてみれば、日本が入ったグループEは最も力が拮抗した4チームが集結していた。イギリス、カナダが強豪であることはもちろんわかっていたが、想像どおりの強さを見せた。あえて言えば、日本の脆さも想像どおりだった。イギリス、カナダを追い詰めて奮闘したのは、実力差があると見ていたチリ。日本が楽に勝ち点を奪える相手ではなかった。

 それでも、なでしこジャパンは田中美南(INAC神戸レオネッサ)の一撃で勝利を掴んだ。チリにどれだけはじき返されようと、20本以上のシュートを打ちながら、「たったひとつでもいいから実を結べ!」と闘志をむき出しにして、呼び起こした日本の意地のゴールだった。

 初戦のカナダ戦でPKを外した田中の心中は察するに余りある。PKを蹴ることを奨めた岩渕真奈(アーセナル)は、試合後の記者会見で「ポジティブにお願いします!」と田中を執拗に責めないよう報道陣に釘を刺した。その前から岩渕は田中を盛り立てようとしていた。最終メンバー選考前最後の国際親善試合だったメキシコ戦では、自らゴールできるタイミングでありながら、田中にお膳立て。なかなかゴールを決めきれずもがく田中を引き上げようとしていた。その気持ちを田中は懸命に結果に結びつけようとしては、から回りしていた。

 岩渕も初戦はエースとして値千金の同点弾を決めたが、右膝を痛めて別メニューでの調整が続いていた。「イギリスと対峙する時に自信を持って臨めるように」とイングランド移籍を果たし、自身の成長を楽しみにしていただけに、万全な状態で臨むことができず、出場はわずかな時間だけで悔しさが残った。

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