U-24日本代表、大勝より特筆すべきは森保采配。フランスを混乱させ「金」へ弾みがついた (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

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 キックオフから不動だったフィールドプレーヤーは、吉田麻也と冨安健洋の両CBと、1トップ上田綺世の3人のみだった。変化はピッチの7箇所で起きたことになる。旗手と中山の多機能性を活かして行なわれた最後の交代の時、フランスは日本の変化の全貌を把握していただろうか。していないと思う。混乱したままタイムアップの笛を聞いたのではないか。

 このような戦術的交代が脚光を浴びたのは、選手交代3人制で初めて行なわれた1998年フランスW杯だった。ベスト4に進出したオランダの監督、フース・ヒディンクが採用したことで、流行が始まった。それから23年。Jリーグでも戦術的交代は、もはや当たり前の戦い方になっている。だが、代表チームで監督が鮮やかに決めるシーンには、なかなか遭遇できずにいる。

 代表チームで戦術的交代が不可欠になるのは、主に短期集中トーナメントだ。W杯が一番わかりやすい。ロシアW杯、西野朗前監督はベルギーに敗れた決勝トーナメント1回戦で、3人の交代枠を2人しか使用していない。手駒を余したまま敗退することになった。万が一ベルギーに勝っても、次の準々決勝には選手起用のアイデアが尽きた状態で臨むことになっていただろう。

 金メダルを狙う森保采配は、西野的であっては困るのだ。しかも今回は、日本が短期集中トーナメントで初めて体験する交代枠5人制だ。枠が2人分も増えている。監督采配が結果に占める割合も大幅に増えている。

 このフランス戦はそうした意味でも合格だった。5分、10分の遅れがあったが、相手を混乱させることはできた。

 効いていたのは旗手だ。立ち上がりから、堂安、久保とはまたひと味違う独得の存在感で、日本の攻撃陣のバランスを取っていた。この左ウイングのポジション。試合前は第2戦で好プレーを見せた相馬が先発するものと思われていた。森保監督は、いい意味でこちらの予想を裏切ったわけだ。旗手を最後までピッチに残したことも大きかった。早々にベンチに下げていれば、戦術的な交代が決まることもなかったのだ。それが、決勝トーナメントに向けて弾みになった感じだ。

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