スペインの名指導者が指摘したU-24日本代表の修正点。「バランスの良さを失っていた」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

「ふたつの全く性質の異なるチーム同士の対戦で、非常に興味深かった。日本はスピード、南アフリカはパワーに活路を見出しながら戦っていた」

 スペインのサッカーマスター、ミケル・エチャリはそう言って、東京五輪の初戦で日本が南アフリカを1-0と下した試合を振り返っている。エチャリは長年、スペインの監督養成学校の教授も務めてきた。かつてヴィッセル神戸を率い、現在はマンチェスター・シティの参謀を務めるフアン・マヌエル・リージョは"直系の弟子"にあたる。

「システムもコンセプトも選手のキャラクターも違ったが、両チームが集団戦術を用い、見どころが多いゲームだった」

 そう語ったエチャリは、メダル獲得が至上命令と言われる日本の開幕戦をどのように分析したのか。

南アフリカを混乱に陥れていた田中碧南アフリカを混乱に陥れていた田中碧この記事に関連する写真を見る「日本は戦い慣れた4-2-3-1を採用。久保建英、堂安律、林大地の3人が近い位置でコンビネーションを作り、中盤では田中碧と遠藤航が攻守のバランスを取って、前線とバックラインを連結させていた。三好康児は左サイドで幅を作って、右サイドは酒井宏樹の攻め上がりが目立っている。

 特筆すべきは、それぞれのラインが密接で、距離感がよかった点だろう。吉田麻也を中心に防衛線を作り、ことごとく相手ボールを回収していた。暑さに対する対策か、前線のプレッシングはそこまで強烈ではなかったが、南アフリカにボールをつながさせていない。

 もっとも、南アフリカは3-4-2-1、あるいは5-4-1という割り切った布陣で、粘り強く挑んできた。日本の持ち味であるスピードとテクニックを駆使したコンビネーションを消すように、スペースを埋め、できる限り自由を奪っている。ボールホルダーにはしっかり人がついていたし、ボールを奪うと、すかさず前線の選手がサイドへ流れ、そこにボールを通そうとしていた。

 指導者的視点でいえば、南アフリカは及第点を与えられる戦い方をした。

 一方の日本はスピードとテクニックが顕著で、機動力の高さでゴールに迫っている。

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