宮間あやが忘れられない澤穂希の言葉。ドイツW杯直前に「今獲らなきゃいつ獲るの?」

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 宮間あや-ー彼女ほど誰かのために走り、怒り、笑い、泣ける選手に出会ったことがない。針に糸を通すようなパスを出し、合わせるだけでゴールにしてしまう多彩なキックを放つ。ピンチの時には最終ラインで体を投げ出す姿を何度も見た。例え疎まれようとも伝えるべきことは心を鬼にして伝える。けれどその厳しさの裏には誰よりも繊細な心を持ち合わせていた。厳格なイメージがあるかもしれないが、献身的であり、努力を怠ることはなく、"代表"に全力で向き合ったプレーヤーだった。

 2016年シーズンを最後に、ピッチを退いた宮間にとって、2011年のワールドカップ優勝はどんなものだったのか。あの1カ月、生粋の挑戦者として戦ったからこそ見えたものとはーー。10年という年月を経て、「ようやく楽しかったと振り返られる」と宮間は笑顔を見せながら当時の記憶を紡いでくれた。

澤穂希(左)と宮間あや(右)のコンビは、なでしこジャパンで数多くの得点を生み出した澤穂希(左)と宮間あや(右)のコンビは、なでしこジャパンで数多くの得点を生み出した――18歳から長らく日本女子代表という場所でプレーしていましたが、月日とともに立場もどんどん変わっていきました。

「最初は完全にお姉さん選手にぶら下がっているだけでした。5、6年はずっとベンチでしたけど、その頃から"代表"というものは私にとって特別でした。入ったばかりの頃はチームが勝つことに対して直接自分の力は全然足りないから、どうしたら役に立てるのかばかりを考えていましたね。当時はスタッフの人数も少なかったので、食事の管理とかもやらせてもらってました。途中で補食のゼリーをつまみ食いしたりしたこともありましたけど(笑)」

――確認ですけど"チームのため"ですよね(笑)?

「(女子サッカーでは)当時ゼリーの配給なんて超貴重で、使わなかったらすぐ冷蔵庫に入れておくんです。でも、飲みなれてないから意外と減らなかったりして、3試合目あたりになってくると荷物が重く感じてくる訳です。そうすると『飲んで減らすか......』となる(笑)。『すみません! どなたかゼリー飲まれますか?』って聞いて回って『飲んでいいよ~』と返ってくると『すみません! いただきます!』って感じで減らしていくんです」

――お腹は膨れるし、荷物は減る。一石二鳥ですね。

「試合後は荷物をいかに早く運んで、グラウンドから出てもらうかが重要だったからです(笑)。それくらいしか自分にはできなかったから。練習の時はできないながらも対戦相手になれるように必死でした」

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