スペインの予想以上だった日本の守備の成熟。敵将の評価が高かった選手は?

  • 小宮良之●文 text by Komoiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「ぺドリが試合の流れを変えた!」

 日本戦について、それがスペインの各メディアの論調である。

 18歳のMFペドリは、後半途中に出場すると、日本を手玉に取った。ゴールにはならなかったが、するすると攻め上がり、5、6人を引きつけ、右サイドでフリーになった選手に出したパスは圧巻。同点ゴールを生んだ、左サイドをタイミングと角度で崩すパスも神がかっていた。

 日本の戦い方や選手の出来について、そこまで興味はない。スペイン陣営としては、あくまで調整のための試合だった。長旅、時差、異国での適応(高温多湿の環境など)と、来日して3日しか経っておらず、コンディションは底に近かった。なかでもユーロ2020に出場していた6人の選手は準決勝まで戦い、ほとんど休養せずに五輪代表に合流しているのだ。

「コンディションが上がってきたら、あれは入っているかもしれない」

 吉田麻也は試合後、レアル・マドリードのマルコ・アセンシオが左足で巻くようなシュートを放ったシーンをそう振り返っていた。シュートポジションに入った時の踏み込みが甘く、腰が落ち着かず、本調子ではないのは明らかだった。

 では、スペイン的視点で日本の戦いはどう映ったのか?

U-24スペイン代表のルイス・デ・ラ・フエンテ監督から称賛された冨安健洋U-24スペイン代表のルイス・デ・ラ・フエンテ監督から称賛された冨安健洋この記事に関連する写真を見る「(日本の中で)最も存在感を放っていました」

 日本戦をスペインで生中継していた放送局「TVE」は、久保建英が交代でピッチから下がる時、そのプレーを称賛していた。スペインでプレーする久保は、日本人のなかで最もよく知られた選手と言える。

 この日も、"スペインっぽい"したたかなプレーだった。最初は後手を踏んでいたが、アンカーのマルティン・スビメンディをフタすることで相手の攻撃を分断。これで日本のダブルボランチが相手のインサイドハーフを見られるようになり、中盤の数的不利を解消した。

 これによって攻撃にも転じて積極的に敵陣奥深くでボールを受け、反撃の機会を窺った。先制点の場面では、スビメンディにマークを受けながらスローインのボールをコントロールし、ごりごりと手を使って相手を引き倒して抜け出ると、右サイドから中央に入った堂安律の左足に合わせ、シュートが決まった。

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