日本と優勝候補スペイン。「善戦」ではなく「倒す」ために必要なのは何か (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

◆U-24スペイン代表の「イニエスタ2世」。レアル不合格から18歳で代表の中心に成長した

 ペドリはそのワンプレー前に関わっていた。フアン・ミランダに、その折り返しをお膳立てするパスを送っている。

 スペインの崩しのほうがワンプレー、手が込んでいたわけだ。SBの攻撃参加をまじえた、中盤的な崩しのパスワークが含まれていた。それが、真ん中の守りを固める日本の守備陣の間隙を突く、高度なプレーに結びついていた。対する日本は、久保の高度な個人プレー=ウイングプレーに依存していた。

 日本が本来、目指しているのは、スペインの得点パターンではないのか。個人の力に委ねるのではなく、目指すのは、多くの選手がボールに関わり、いわゆる数的優位を作りながら、パスワークを駆使しながら、理詰めに崩していくサッカーだ。

 ところが、この試合ではパスワークに絡む選手の絶対数が足りなかった。守備的MFの2人(先発は遠藤航と板倉滉)は、どちらかと言えば守り屋だ。ゲームメーカータイプではない。守備的MFでその可能性を秘めているのは、ベンチスタートとなった田中碧ぐらいしかいない。

 また、久保にしても、1トップ下が適役かと言えば、必ずしもそうではない。1トップ下に求められる要素のひとつであるゴールに背を向けたプレーは、けっしてうまくない。一番の適性が、ドリブル力を駆使したウイングプレーにあることは、堂安の得点をアシストしたプレーに、なにより現れている。

 スペインは4-3-3だ。ないものねだりをするわけではないが、いわゆる中盤にゲームメーカー的な役をこなすインサイドハーフが2人いるこちらの布陣のほうが、日本のサッカーには合っているように見える。日本も4-2-3-1一辺倒ではなく、4-3-3にトライすべきではないかと思う。

 そこで注目したくなるのが旗手怜央だ。この日は左SBで先発。後半35分、4-2-3-1の「3」の左にポジションを変えたが、中盤のパス能力を高めたい時、4-3-3のインサイドハーフとして試してみたくなる選手だ。4-2-3-1の守備的MFでもいけそうな気がするが、まだ底が割れていないこの多機能型選手をどれほど有効に使うか。日本の浮沈のカギを握ると思う。

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