森保監督のマネジメントの良さはどこにあるのか。選手選考や起用方法などを考察 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Sano Miki

 しかし、世代交代が必要だからといって、年齢の高い選手を闇雲に切り捨てなかったのが森保流の丁寧さだったと思う。

 それまでの日本代表を長きにわたって支えた岡崎慎司、香川真司、乾貴士などのベテラン選手を、森保監督は少なくとも一度は日本代表に招集した。この意図は「年齢で招集されないことはない」とのメッセージを彼らに伝えたかったのだと思う。加えて、大舞台や勝負どころになれば、経験が豊富なベテランの存在が必要になるケースもある。もしかすると、いざという時にチームを好転させる資質の有無をチェックしたのかもしれない。

 丁寧な招集や起用は、ベテラン選手だけにとどまらない。これまで多くの日本代表監督は海外組を優遇してきた。もちろん、それには理由があって、海外組はJリーグで結果を残した能力の高い選手で、日常的に大きくて強い外国選手とわたりあっているので、日本代表でも高い戦力になるからだ。

 しかし、海外クラブに所属していれば誰でも彼でも、Jリーグ組より能力が上回っているわけではない。過去にはJリーグ組をチェックしないまま、海外クラブでプレーしているというだけで国内組よりレベルの低い選手を突拍子もなく招集した監督もいた。

 たが、森保監督はそうしたところがまったくない。海外組を招集する一方、Jリーグにも足繁く通って、年齢にかかわらず能力やコンディションのいい選手を日本代表に引き入れてきた。これによって、Jリーグでプレーする選手もモチベーションを高く保つことにつながった。

 選手起用でも丁寧さは随所に見られた。日本代表は19年9月から始まったW杯アジア2次予選を8戦全勝。総得点46、総失点2で、格下に取りこぼしせずに勝ち点を積み上げたため、3月や6月の国際試合シリーズでは数多くの新たな戦力を試す余裕も生まれた。Jリーグからも多くの選手が起用されたが、どんな相手であっても結果を残した選手には、また次もチャンスを与えたのが印象的だった。

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