丸山桂里奈が語るなでしこジャパン10年前のW杯。ドイツ戦での劇的ゴール後、会場の雰囲気に「気持ちワル!!」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

「則さんがずっと『この試合は絶対カリナが決めるから』って言ってて、その割に途中から入ってもサイドに置くんですよ。『サイドから決めろって無理だよ、ドイツ選手は超攻めてくるのに』とか思ってたんです(笑)」

 延長後半、丸山はポジションをトップへ変える。そこであのゴールが生まれた。

「円陣のときに『絶対にチャンスが来るから裏に走れ』って言われてたんです。あれは感覚でした。全然ボールなんて見ていなかったし、(岩渕)真奈がボールを持ったと思った瞬間に私はもう走り出していました。イワシ(岩清水)がボーンって蹴って、それを真奈がトラップするんだけど、ボールが澤(穂希)さんの前に落ちて縦に出した。あれも我が強い選手だったらトラップして自分で普通に振り返ってキープしたりする。でも、あの時はみんなでゴールに運ぶイメージがあって、それに導かれて私もゴールに向かって走った、そんな感覚でした」

 ここから「スーッとコースに光が走ったから、そこに合わせて蹴っただけ」という丸山のゴールは2万6000人のドイツ応援団の言葉を一瞬でかき消し、スタジアムを"無音"にさせた。ゴールからメンバーと抱き合うまでの時間の感覚を、丸山ならではの表現でこう振り返った。

「あの静かさは私、一回どこかに連れて行かれたかと思った。違う次元に行くって聞くじゃない? みんなの動きがめちゃくちゃ遅く見えて、私の中では10分くらいに感じてた。あんな感覚になったことなんて今までなくて、すごく怖かったんです。何万人も入ってるのに誰の声もしないって。『気持ちワル!!』ってなるくらいでした」

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