丸山桂里奈が語るなでしこジャパン10年前のW杯。ドイツ戦での劇的ゴール後、会場の雰囲気に「気持ちワル!!」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 こんな些細なことでも、浮上の大事なきっかけになったのだ。それをバネにして笑い飛ばせるというのも2011年のあのチームの特長だ。21名がそれぞれの夜を超えて、丸山がその名を遺すゴールが生まれるドイツ戦を迎えた。

「ドイツ戦は独特の雰囲気でした。みんなの気持ちも一つになって、スタメンの選手もすごく粘り強く戦ってくれたから、サブが出て活躍する場ができたと思います。則さん(佐々木則夫監督)がすごくサブの底上げを重視する人だったので、それが時にレギュラー陣との間に壁ができるくらいのテコ入れだったから(笑)、その期待に応えたいっていうのも正直ありました」

 確かに佐々木監督は控え選手の底上げに力を注いでいた。試合の中日のトレーニングでも、ほとんどの時間を控え選手の指導に割くことも多かった。そしてもう一つ、この年に起きた東日本大震災は選手たちの心境に大きな変化をもたらしていた。大変な状況下でたくさんの応援とともに送り出されたことを選手たちは常に心にとどめていた。

「特に私は、福島のチームに在籍(TEPCOマリーゼ/2005−2009年)していたこともあったから、よりみんなのためにっていう想いは強くて、それがゴールという形になったのはうれしかったです」

 負けたらワールドカップが終わる......そして相手は断トツの優勝候補・ドイツ。スタジアムはほぼドイツのサポーターで埋め尽くされていた。日本の粘る守備の前にドイツが苛立ちを募らせつつ、スコアレスのまま試合は延長戦へ突入した。

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