遠藤保仁vs中村憲剛。どっちのスルーパスがすごかった? 玉田圭司が詳細解説

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

日本サッカー界の、稀代のパサーとしてプレーをつづける遠藤保仁。昨シーズンの引退まで、感性豊かなパスでスタジアムを沸かせつづけた中村憲剛。はたしてどちらのパスがすごかったのか。日本代表で2人のパスの受け手だった、V・ファーレン長崎の玉田圭司選手に2人の特徴を語ってもらった。

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パサーとして優れた能力を発揮する遠藤保仁(左)と中村憲剛(右)パサーとして優れた能力を発揮する遠藤保仁(左)と中村憲剛(右) 僕は選手同士を比べてどちらがすごいかという議論は好きではないんですが、ヤットさん(遠藤保仁)と(中村)憲剛の2人が、特別な能力を持った選手なのは間違いありません。それは彼らのプレーを見てきたみんなが知っていることだと思います。

 どちらも優れたパスの出し手ですが、そのなかでもタイプは少し違うと思うので、一緒にプレーしてきた印象とともに、それぞれのすごさについて話していきたいと思います。

 2人とは日本代表で何度も一緒にプレーしてきましたが、共通しているのは、ボールを持った時に周りに良い動きをしている選手がいたら、必ず見えている点です。

 だから、僕は常に立ち位置やポジショニングに気をつけて、いつでも良い形でボールがもらえるよう意識していました。

 さらに2人に共通して言えるのは、いつも余裕を持ってプレーできること。自分のプレーにいっぱいいっぱいにならないので、時間やスペースが限られる現代サッカーのなかでもより時間を長く感じながらプレーしていたと思います。

 パスを受ける前からいろいろなイメージが頭の中にあるので、ボールを受けてからも無駄がなく、時間をうまく使えているわけです。パスの受け手としても、出し手にそれだけ余裕があると動きやすくなります。

 共通する点が多いなかで、ヤットさんのほうがより全体を見ながらプレーするのを好むタイプで、憲剛のほうがより攻撃的で直線的なパスを得意とするタイプと、特徴は違いました。今回の"スルーパス"の印象が強いのは、どちらかと言うと憲剛のほうだったと思います。

 ちょっと前のスペイン代表で例えると、ヤットさんは中盤の底でゲームを組み立てるシャビ・アロンソで、憲剛はより前でゲームをつくるシャビ・エルナンデスといったイメージです。

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