日本代表が演じた激しい撃ち合い。イタリアサッカーへのコンプレックスはなくなった

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

 Cattiveriaはイタリア語で「意地悪、質の悪い」という意味である。ブラジルのマリーシアにも近いが、同じではない。勝負のためには、無様な悪になれる。守備的でつまらないとか、卑怯な戦い方と言われようとも、勝利こそすべてに優先する。

 それは日本人にとって分厚く高い壁だった。しかし、時代は移ろう。日本がイタリアを相手に、撃ち合いを演じられる日が来たのだ。

 2013年6月、ブラジルのレシフェ。日本はブラジルワールドカップの前哨戦となったFIFAコンフェデレーションズカップで、イタリアに抜き身の勝負を挑んでいる。アルベルト・ザッケローニ監督に率いられた日本には、「世界を驚かせる」という高揚感があった。

 開始早々、左サイドの香川真司が自信に満ちたプレーを見せ、ピンポイントのクロスや精度の高い左足ミドルで守護神ブッフォンを脅かした。イタリアを守勢一方に追い込む。カテナチオの国に、心理的ストレスを与えた。

 そして21分、岡崎慎司が相手DFにプレスをかけると、GKへのバックパスがずれる。これに突っ込んだ岡崎がGKと交錯し、PKの判定。これを本田圭佑がゴールに蹴り込んだ。

 先制後も日本の勢いは衰えなかった。パスをつないで敵陣に侵入し、セカンドボールを奪い返す。長谷部誠のミドルは豪快で、ゴールの匂いがした。イタリアのディフェンスに動揺が走っていたのだろう。33分、浮いたボールの処理にもたついたところ、エリア内で香川がコントロールし、反転から左足ボレーを叩き込んだ。

 ただ、イタリアは0-2とされたことで目覚めた。前半終了間際、CKからのクロスをダニエレ・デ・ロッシが豪快なヘディングで放り込む。後半4分にはしつこくクロスを折り返すと、日本のオウンゴールを誘った。その2分後、混乱につけ込むように激しく攻め立て、強引に打ったシュートが日本には不運なハンドとなってPKとなった。これで呆気なく逆転した。

 カルチョは攻められないわけではない。勝利の手段として守りを極めてきただけで、攻撃に転じた時の勢いはすさまじい。怒涛の攻撃力を隠し持つことで、世界の頂点に立ってきたのだ。

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