日本代表がW杯直前に演じた強豪とのドロー劇。高原直泰「能力的にドイツ選手に劣っていない」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

 しかし後半10分、日本は反撃に出る。

 ドイツのCKをクリアすると、どうにかパスをつなげ、中村俊輔が自陣内で相手2人のマークをはがし、斜めにパスを打ち込む。これを前へ走った柳沢敦が受け、左サイドから裏を駆け抜けた高原へ。当時、ブンデスのハンブルガーSVでプレーしていた高原は、GKと1対1になると右足を振り抜いてネットに叩き込んだ。

 そして後半19分にも、日本は追加点を決める。中村、中田英寿の二人が右サイドで起点となって、高原がゴール正面でパスを受ける。ターンからのドリブルで二人のディフェンダーを一瞬で置き去りにし、右足を力強く振って逆サイドに2点目を突き刺した。

「何年かドイツでプレーする中、ようやく手ごたえを感じるようになってきました。当たりの強さに慣れて負けなくなった。そこで、自分本来の良さである技術や一瞬の速さを出せるようになった」

 ブンデスで4シーズンを戦っていた高原は当時、そう説明していた。ドイツ戦で決めたゴールは、その言葉の証左だった。

「日本のFWとドイツのFWを比べて、自分たちが能力的に劣っているとは思えません。確かに、多少はドイツのFWのほうがフィジカルは強い。でも、スピードやテクニックは負けていないと思うし、日本人のほうが優れていると感じることもあります。

 苦しむ理由は環境の変化で、出ていたボールが出てこなくなる。そこで練習からしっかり主張する必要があって、コミュニケーションの難しさで、特に日本のFWはパスのタイミングというか、出し手との呼吸が重要だから。ストライカーはゴールできれば、どんな形でも認められる。それで関係も良くなるんです」

 ただ、日本は高原の2得点のリードを守れなかった。ドイツの単調な力攻めに対し、我を失った。先発の欧州組は高原、中田、中村の3人のみで、戦術的修正ができず、ラインがずるずると下がってしまう。カウンターの位置が低すぎ、反撃できないまま、波状攻撃を食らった。コーナーに追い詰められて、ひたすらパンチを浴び、KOを待つようなものだ。

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