魅力的だった日本代表の右サイド。海外組と国内組の差はなくなった

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 左と右では別のチームを見るようだった。それでも、その小川がオナイウ阿道の3点目となるヘディングシュートをアシストしたり、全体としては合格点の出せるサッカーと言えた。

 ところが、合格点を出したくなるそのパスサッカーの魅力は、佐々木とオナイウ阿道の交代を機に、失われることになった。その芽を監督自ら摘んでしまったという印象だ。その一方で、メンバー交代も4人しか行なわなかった。1枠分、余したまま、終了の笛を聞いた。スマートとは言えない采配である。

 終盤、大差でリードしているにもかかわらず、5バックで守りを固めるサッカーを披露した試合として記憶に新しいには、3日前、豊田スタジアムでジャマイカと対戦したU-24日本代表だ。横内昭展監督の采配と、この日の森保監督の采配は、まさに瓜ふたつだった。

 彼らは日本サッカーに何を求めようとしているのか。想起するのは、彼らが監督とコーチの関係でコンビを組んでいた、かつての広島のサッカーだ。そこで4年間で3度、Jリーグを制した実績を買われ、現在のポジションに迎えられたわけだが、時代はそこから大きく動いている。

 Jリーグをリードするサッカーは1に川崎、2に横浜FMだ。かつての広島的なサッカーではない。森保、横内コンビも、時代の流れは承知しているはずだ。かつての広島式ではないスタイルで試合に臨んでいるが、捨て切れていない。時々、広島式が頭をもたげる。ノスタルジーを捨て切れていない様子だ。佐々木の投入は、申し訳ないが、良い策だったとは思えない。

 だが、それが致命的な問題にならないのが、このレベルのサッカーだ。モンゴルに14-0、ミャンマーに10-0、タジキスタンに4-1、セルビアに1-0、そしてこの日、キルギスに5-1。さらに3-0で勝利した韓国戦を加えれば、他国との試合で今年に入り日本代表は6戦6勝だ。

 得点37、失点2。現在開催されているユーロやコパ・アメリカと比較すると、その緩い戦いぶりが顕著になる。日本がユーロやコパ・アメリカに出場して戦う姿を想像すると、むしろ大いなる心配を抱きたくなる。

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