「もうね、終わったと思いました」。岩清水梓が明かすなでしこW杯優勝と絶望もあったその舞台裏 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 そして、岩清水がこの大会で最も印象深い場面として挙げたのが、このドイツ戦だった。

「今まで勝ったことがない国に勝ったということで勢いは増したし、優勝するんだという目標が定まった。あと、当時のなでしこジャパンは、対戦国の応援で何万って人がスタジアムを埋め尽くすアウェー環境が好きという性質を持っていたから(笑)。かえってよかったんじゃないかなと今なら思う」

 ドイツ戦は延長戦での1-0。岩清水たちDF陣だけでなく中盤、前線すべての選手が走り尽くして守り切った。前日、ほぼクロス攻撃の確認だけで練習を終えたドイツが、そのクロスをゴールに結びつけられず次第に焦っていく様子を肌で感じることができた。確かにドイツには日本に負けるわけがないという慢心があった。しかし、日本がそれ以上に驚異の粘りを見せたのだ。だが、完璧な守備だったというわけではない。

「ドイツ戦の映像を見返す機会があったんですけど、『こんなにGKの近くに自分たちがいたの?』『ペナルティエリア内に敵が入っちゃってるじゃん! 大丈夫?』ってゾッとしました(笑)。今の私なら、ラインを下げずに我慢しろって言うかな。ただ、当時はみんなで支え合っていたからできたこと、あれはあれで"守リズム"が生まれて楽しかったですよ」

 印象に残るシーンは決勝で人生初のレッドカードの場面を挙げるかと思いきや、ドイツ戦での奮闘だったことが意外にも思えたが、当人はあっさりとしたものだ。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る