上田綺世は超論理型ストライカー。「選択肢に0.2秒で答えを出します」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

――ストライカーとは何か?

 法政大学時代、プロ入りする前の最後のインタビューだった。筆者は、上田綺世(鹿島アントラーズ)にそう投げかけた。

「頼られる存在でなければならないと思っています。そのためには味方を頼れないといけない。お互いが信頼を得て、得られて、ストライカーは成り立つ。一匹狼はダメ。ましてや、僕なんて動き出しが武器なんで、パサーがいないと生きない。ゴールは最後の1割が自分で、組み立ててくれる9割が別にあると思っています。そこで自分の色を発揮し、成功に終わらせるのが役目で......」

 上田は自らのプレーを精密に見つめ、順序だてて説明した。いわゆる論理型のストライカーだ。

「FWというポジションは、単純に点を取るのが仕事で、ミスしてもうまく切り盛りして次に行く。捨てるところは捨てて、拾うところは拾う」

 彼にはストライカーの定理があった。

U-24日本代表としてジャマイカ戦に後半から出場した上田綺世U-24日本代表としてジャマイカ戦に後半から出場した上田綺世この記事に関連する写真を見る 6月12日、豊田。センターサークルで三笘薫がドリブルでジャマイカのひとりをはがしてボールを運んだ瞬間だった。上田はパスコースを示すように疾走。並走するディフェンダーを置き去りに、パスを呼び込む。無駄にボールに触らず、最短距離でゴール前に侵入し、GKと1対1になった。

「ゴロでコースを狙うか、GKをかわして打つか。(GKが)中途半端な出方だったので、ここはループだろうと」

 試合後に上田は冷静にそう振り返ったが、GKの頭上を抜くシュートの軌道は掛け値なしに美しかった。

「僕はシュートを打つときは、選択肢を消去法で消していきます」

 かつてのインタビューで、上田は淡々と語っていた。

「少し先を見るというか......。例えばですが、背後に出たボールでGKと1対1に近い状況になったら、僕の選択肢はだいたい4つあります。ファーにゴロ、ニア、ループ、そしてGKをかわす。GKを見たとき、瞬間的に『ニアだと当たる』『ループはできない』とか感覚的に"はばばば"って頭の中にある写真映像をはじいて。たぶん、0.2秒とかで答えを出します」

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る