東京五輪最終選考試合で久保建英が見せた真骨頂。後半の采配に感じた違和感

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 もっとも、ウイングがサイドでコンビを組む相手は通常、サイドバック(SB)だ。この日、スタメンを飾った選手でいえば、旗手怜央(左・川崎フロンターレ)と酒井宏樹(右・浦和レッズ)になる。しかし、彼らは自重気味に構えた。特に右の酒井が高い位置に進出して、堂安らと絡む機会は少なかった。これはむしろ心配な点になる。酒井は高い守備力で貢献したが、オーバーエイジの助っ人SBとしては、専守防衛だけでは物足りない。

 この試合のハイライトは後半12分。三笘のドリブルだった。タッチライン際でボールを受けながら、中央へ進出。人混みをかき分けるようにするすると競り上がり、ハーフウェイラインを突破すると、前方をディフェンダーと併走する上田綺世に縦パスを送った。上田はマーカーを軽く外すと、3点目となるゴールを鮮やかに決めた。

 この試合は、五輪メンバーの選考の最終戦だ。スタメンを飾った11人に冨安健洋(ボローニャ)、板倉滉(フローニンゲン)などA代表でも活躍する実力派を加えた選手が、当選ラインに近いと考えるのが自然だ。後半頭から交替出場した上田にとってこの3点目は、当選圏内入りを決めた一撃と言えるのかもしれない。

◆東京五輪代表メンバーの残り枠は「3」。当落線上ギリギリにいる選手は?

 一転、釈然としない光景がピッチに広がったのは、後半15分以降だ。三笘と旗手に代わり、相馬勇紀(名古屋グランパス)、橋岡大樹(シント・トロイデン)が投入された瞬間からだった。

 日本は布陣を3-4-2-1的な5バックに変更。アタッカー陣の枚数を減らし、後方に人数を増やす守備固めに入った。まったく賛同できない采配だった。

 フランス、メキシコ、南アフリカ。日本が東京五輪でグループリーグを戦う相手は強豪揃いだ。リードして終盤を迎えた時、後ろに人数を多く割いて逃げ切りを図る、その予行演習でもしておこうというつもりだったのだろうが、実際に向き合っている相手は、ジャマイカという弱小チームだ。

 5バックの効果は、後半19分、堂安による4点目のゴールが決まる前後くらいから表れた。日本は徐々にリズムダウン。ペースを失い、ジャマイカがボールを回す時間が増していった。その流れでタイムアップの笛を聞いた。尻すぼみとはこのことである。

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