五輪オーバーエイジのゲームマネジメントが秀逸。堂安律や田中碧が実感したそのすごさ

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 試合後には、「まだ連携ができていないので、僕が悪いんですけど、イージーミスも何度かありました」と柔和な表情で謙遜したが、ドイツとフランスで足掛け9シーズンを戦ってきたサイドバックもまた、次元の違う働きを披露。守備時には激しく競り合って敵の流れを止め、攻撃時にはアタッカーをサポートしつつ、自らも怒涛のオーバーラップから高速クロスを入れ、45分にはそれが相手のオウンゴールを誘った。

「オーバーエイジとして、もっともっと(やらないと)。もう2アシストぐらいできたし、守備面でも1回抜かれたので。完璧を求められる立場だと思うので、その意味ではまだまだ。完璧を追求していかないといけないですね」

 Jリーグへの復帰も噂される31歳は、あくまで足元を見つめている。そうしたプロフェッショナリズムもまた、長年の欧州での日々で培ったものかもしれない。

 その点は、主将の吉田にも大いに感じるところだ。11年半前にオランダに渡り、イングランドで7年半、イタリアで1年半プレーしてきたベテランは、風格ある佇まいで最終ラインを統率。ボールを持てば、正確なフィードを左右に散らし、強い縦パスを何度も通した。そのうちのひとつから生まれたのが、48分の相馬勇紀のチーム4点目だ。吉田の縦パスを堂安が中に動きながら受け、フリーの相馬に繋げた。

 堂安が感嘆する。

「個人的に、ゴールよりもあのアシストが嬉しかったです。それは、チームとしてのコンセプトがすごくハマったシーンだったから。麻也くんのパスが完璧でした。タイミング、質、パススピード、どれをとっても」

 吉田自身は次のように振り返る。

「ああいうのが入ればビッグチャンスになるけど、引っ掛かるとピンチになる。そこのせめぎ合いは難しいところですが、後半はうまくいきました。

 ただ強い相手になると、そのスペースを空けてくれない。そうなった時は5点目みたいに、ボランチを経由して少ないタッチで相手のプレスをかいくぐっていくのが日本の形であり、森保(一監督)さんのサッカーの理想系だと思います」

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