2021.05.14

川口能活と楢﨑正剛は「GKとしてどちらが上か」。2人を間近で見た元日本代表GKが徹底比較

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

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 現代サッカーではGKの「フィード能力」は高いレベルを求められるものですが、2人はこれも優れていました。キックの種類は多彩で、パントキックだけでなく、置いたボールからのフィード能力も持っていました。スローイングも含めて、状況によって球の質を変えられるだけの技術を両者とも持っていました。下からのパントキックとハーフボレーの2種類で十分だった私の時代とは、だいぶ違いますね(笑)。

 GKにとって「存在感」は相手にどれだけプレッシャーを与え、味方にどれだけ安心感を与えられるかという点で大事なポイントになります。相手を威圧する意味では、川口選手のほうが存在感はあったと思います。表情や試合のなかでの味方ヘの叱咤激励など、感情が出る場面では川口選手は際立っていました。

 もちろん、楢﨑選手が相手へ迫る部分がないわけではありませんが、どちらかと言えば佇まいで威圧感を与え、隙なくプレーをしているなかで相手がおのずとプレッシャーを感じるタイプですね。

 いろいろな項目を挙げて比べてきましたが、結局どちらのほうが優れているのかと言われると、GKの基本能力ではやはり甲乙付け難いものがあります。ただ、そのなかでも予測面に関しては川口選手のほうが一歩秀でていると思います。相手の攻撃を予測して、スピードを活かしながらDFラインの裏を広範囲に守れるのが川口選手です。

 一方で相手が有利な状況から、自分が優位な間合いに引き込む力で秀でているのは楢﨑選手だと思います。ノーチャンスな状況でも、最後まで粘ってどうにかする力を持っています。これらは微々たる差というか、自分のストロングポイントを理解した上でのプレースタイルの差と言えるでしょう。

 そうした特徴があったなかで、ワールドカップのフランス大会では川口選手、日韓大会では楢﨑選手、ドイツ大会では川口選手と、大会ごとに正GKが入れ替わりました。これはどちらが優れているというより、監督によって求めるものの違いだったのでしょう。

 フランスW杯では、GKは2人と私の3人で代表メンバーに選出されました。メディアでは2人はライバルとして、よく "犬猿の仲"みたいな報道のされ方もしていましたが、私もそんな新聞記事を読んで「お前ら仲悪いらしいじゃん」なんてからかっていましたね。2人はそんな記事に対して笑っていましたよ(笑)。