日本が試合内容で韓国を圧倒した理由。その長所は接近戦でこそ活きる

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 3-0。内容とほぼ合致したスコアだった。2-0で終わっていれば、おつりが来る内容になる。これまで相当数の日韓戦を観戦してきたつもりだが、日本が韓国に対し、今回ほど内容で圧倒した試合は見たことがない。

 約7万人収容の横浜国際日産スタジアムに集まった観衆は8356人。閑散としたスタンドには拍手のみがこだました。韓国サポーター席の一角から、劣勢にいたたまれなくなったのか、歓声が漏れる瞬間もあったが、スタンドが日韓戦ならではの緊張感に支配されることはなかった。

 韓国は拍子抜けするほどあっさりと、日本の軍門に下った。日本が強かったのか。韓国が弱すぎたのか。少なくとも韓国はいつになく迫力に欠けるサッカーをした。

韓国戦で先制ゴールを決めた代表初招集の山根視来韓国戦で先制ゴールを決めた代表初招集の山根視来 前回の対戦(2019年12月/E-1選手権・釜山アジアード競技場)では、韓国が日本が採用する3-4-2-1の弱点を立ち上がりからガンガン突いてきた。3バックの両脇、両ウイングバックの背後に、長いボールを送り込み、一気呵成に攻め立てた。日本はその対応に追われ、防戦一方となり、先制点を奪われることになった。

 フィジカル面で勝る韓国選手の長所が、活かされやすい試合展開となったわけだ。それを引き出してしまったのは日本。森保一監督そのものになるが、今回は違った。日本は4-2-3-1を採用。ピッチ上は4-2-3-1同士が、がっぷり四つに組み合う展開となった。

 森保監督はなぜ今回、布陣を3-4-2-1から4-2-3-1に変えたのか。これは就任当初から森保監督につきまとう疑念でもある。あるときは3-4-2-1、あるときは4-2-3-1と、森保監督は性質の異なる両布陣を説明なしに使い分ける。一方、横内昭展コーチが采配を振ることが多い五輪チームでは、もっぱら3-4-2-1だ。森保監督、横内コーチの関係でJリーグを制したサンフレッチェ広島時代も、採用した布陣は3-4-2-1だった。

 森保監督が好む布陣はどう見ても3-4-2-1なのである。しかし、世の中は4-2-3-1タイプのサッカーで8割方占められている。森保監督はなぜ3-4-2-1を好むのか。口を割りたくない理由はわからないではない。後ろで守る守備的サッカーだからだ。できれば伏せておきたい事実になる。

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