鮫島彩が語る10年前のなでしこW杯優勝。絆を深めた「恐怖」のミーティング

  • 取材・文・撮影●早草紀子 text&photo by Hayakusa Noriko

 なかでも鮫島が任された左サイドバックと重要な関係にある左サイドハーフにいた宮間あやには、別格の信頼度が伺えた。決勝ではアメリカを抑え込めずに鮫島らの目の前でシュートを放たれた時、『ギャー!!やめて~!!』と2人が叫んでいたことを思い出す。

「そうそう! そういうのもすごく楽しかったんですよね(笑)」

 鮫島と宮間の連係はとにかく緻密で、それはサイドを突破されれば失点に直結する危機感の表れだった。ここまで寄せたら、このパスコースを切る。1歩2歩レベルまで突き詰め、最後は阿吽の呼吸の域にまで達していた。

「あやさんのうまさは言うまでもないけれど、タテ関係を組ませてもらって毎度、特等席でそのプレーを見られたのは幸せでした(笑)。ただ、絶対に私に要求したいことはあったと思うんです。でも、あやさんはいつも『自分がこうしてみるね』って歩み寄ってくれていた。だから、少しでもあやさんの負担を減らせるように、私もできることを増やしていきたいと思っていました。今思えば、そう思いながらプレーできるのも楽しかったんですよね。団体競技の醍醐味でしょ?」

 鮫島はそう笑ったが、それは相手が宮間だったからというのもあるだろう。

 思えばピッチ上にはこうした関係性があちこちで見られた。それがチーム全体に広がって上昇気流となり、快進撃につながっていった。

「今でもうまく表現できないんですけど、本当に不思議な力が働いていました。決勝トーナメントに入ってからは、『勝てるかもしれない』という自信とは違って、ビビっていたけど、ポジティブなビビり方というか......」

 ビビっていることに変わりはないが、みんなの心を一つにしたエピソードがある。

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