W杯予選に向けた日本代表の課題。監督の「駆け引き」の経験 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by JFA

 まずこの2試合での収穫に目を向ければ、遠藤航の存在感に優るものはない。ブンデスリーガを観ていない人は彼のプレーに驚いたかもしれないが、この強化試合で見せた遠藤のパフォーマンスは、ブンデスリーガで日頃から当たり前のように発揮しているものだ。

 相手ボールを奪う能力は圧倒的で、前線にボールをつなぐ縦パスの意識も高い。攻守のバランスを取るだけではなく、機を見てゴール前へ飛び出して行く判断力も抜群にいい。

 これまで日本のボランチの軸は柴崎岳が務めてきた。その柴崎を上回る成長とパフォーマンスを見せている遠藤が、今後はボランチの軸になっていくのではないだろうか。

 今夏にFC東京からロシアリーグのロストフに移籍した橋本拳人は、久しぶりの代表戦で爪痕は残したと思う。所属クラブでは前めのポジションをやるなどして得点力でも成長しているが、遠藤との組み合わせで今後はおもしろい化学変化を起こしそうな気がする。

 一方、2試合での課題に目を向ければ、相変わらず臨機応変さで拙さを見せた。とくにメキシコ戦。相手は後半から選手の並びを変えてきたが、日本代表はそこに対応できなかった。

 相手の出方に合わせて、選手主導で柔軟に対応することは、日本がW杯ベスト16以上を望むうえでは欠かせないものだろう。そこを十分に理解しているからこそ、森保一監督はこれまで同様に、メキシコ戦でも選手たちの対応力を高める機会ととらえてベンチ主導の采配はしなかった。

 その結果が2失点。試合後の選手たちは口々に「個の力を伸ばしたい」とコメントしていた。だが、個の能力を高めることだけが、チームの対応力や臨機応変な能力を高める解決策ではないはずだ。

 メキシコ戦の日本は、対応を選手たちの判断に任せ、試合終了まで改善できないままだったが、この先、時間を費やしてもできないままという可能性もある。我慢するのも大事だが、ベンチが状況の改善がこのままでは難しいと見極めたら、選手交代を使ってピッチの選手たちに「こういうふうに打開しよう」というメッセージを送ることも必要だった。

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