名波浩が振り返る「伝説の一撃」。日本代表のゴールの五指に入る! (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・構成 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

2000年アジアカップにおける「伝説のゴール」を振り返る名波浩氏2000年アジアカップにおける「伝説のゴール」を振り返る名波浩氏 だが、そんな嫌なムードになりかけた試合を、"伝説のFK"が一変させた。おそらく日本代表史において十指、いや、五指に入るであろう、スーパーゴールである。

 敵陣ペナルティーエリアの右角付近でFKを得た日本は、"スリーピング"を狙っていた。

 スリーピングとは、フィリップ・トルシエ時代の日本代表が、主にCKで取り入れていたオプションのひとつである。ボールをゴール前へ入れると見せかけ、ゴールから離れたペナルティーアーク付近へボールを送り、そこへフリーで走り込んだ選手がボレーで合わせるというサインプレーだ。

 ゴール前に走り込むそぶりを見せず、離れたところで"寝たふり"をしていた選手がシュートを狙う。それゆえスリーピング、である。

 ボールを足元にセットした中村俊輔が、小さな助走からふわりと浮かせたパスを左へ送る。すると、ペナルティーアーク左へフリーで走り込んできたのは、名波である。

 浮き球を確実に捉えるべく、背番号10が小さくコンパクトに、それでいて力強く振った左足から放たれたボレーシュートは、弾丸と化してゴールネットに突き刺さった。

「俊輔からサインが出ていたんで、だいぶ(寝たふりをして)タメて入ってきたと思うんですけど......、よく入りましたよね。練習じゃあ普通、ほとんど枠にもいかないから」

 決めた本人すら驚く、完璧なゴールだった。

 もちろん、これ以前にもスリーピングが試合で使われたことはある。ただし、それは前述したように"主にCK用"のオプションだった。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る