森保采配における変化の兆候。レアケース発生で3バック化は加速するか

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 日本サッカー協会●写真 photo by ©JFA

「攻撃ではウイングバックがワイドなポジションをとり、4バックの相手に対して守備対応を難しくさせる部分(を意図した)。(つまり)我々がサイドの突破を考えながら、ワイドなポジションに選手がいることで1トップと2シャドーが中(に生まれるスペース)で起点となり、攻撃を仕掛けられる。

 守備では、前半に相手の右SB(2番/ファイ)と左SB(6番/オヨンゴ)がかなり高い位置をとり、我々の守備対応が難しくなっていたので、3バックにして(守備の)役割をはっきりさせた」

 これは昨年6月のトリニダード・トバゴ戦後にも語った、3バックの狙いとメリットを改めて説明した格好だ。しかし、これまで戦術が機能していない試合でもシステム変更をしなかった森保監督だけに、戦況を見極めてそれを実行した今回は極めてレアケースと言える。ある意味、森保采配における変化の兆候とも受け止められる。

 では、肝心のシステム変更の効果はどうだったのかと言えば、少ないながらも変化は起きていた。

 ひとつは、2シャドーが相手アンカーの両脇にあたるハーフスペースに立ち位置をとるため、カメルーンのインサイドハーフが背後を警戒。それにより日本のダブルボランチへの圧力が弱まり、日本のビルドアップ時に柴崎を経由する余裕が生まれた。

 ただし、それでもカメルーンの個人能力は高く、当初は思ったほどの効果は得られていない。実際、柴崎から効果的なパスが出るようになったのは後半25分以降で、それはカメルーンが選手交代と疲労によって動きが鈍り始めてからだ。後半に日本が見せた敵陣でのくさびの縦パスも、3本にとどまっている。

 もうひとつの変化は、サイドからのクロスが明確に増えた点。とくに伊東が右ウイングバックに入って、日本の右サイドの攻撃が活性化。後半に計8本見せたクロスのうち、伊東が記録したのは4本で、酒井と途中出場の鎌田大地もそれぞれ1本を記録した。カメルーンの左SBオヨンゴ(6番)の攻め上がりが、後半になってから激減した理由でもある。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る