川口能活が若手GKの海外挑戦に「僕のマネをしてほしくない」と言う理由 (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

 現役時代の川口といえば、GKながら積極的に飛び出し、広範囲をカバーするプレースタイルに定評があった。言ってしまえば、ゴール前にボールを放り込み、肉弾戦で勝負してくるイングランド2部リーグの環境は、川口の魅力を半減させるものだった。

「しかも、ゴール前でのバトルにおいてファウルを取られることが少なかったのも苦労したというか。あとはゴール前に選手が密集しているので、自分が出て行くスペースがなくなる。そのスペースがあるのとないのとでは、自分の戦い方も変わってくるので、アプローチを変えなければならなかったんです」

 また、言葉の壁も少なからずあった。ポーツマスには気さくなチームメイトが多く、家に招待してくれたり、食事に誘ってくれたりと、コミュニケーションは取れていたという。だが、日本とは異なる環境・文化だけに、生活していくうえでは当然ストレスもあった。

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「イングランドは英語が話せて当たり前というところがあったので、監督やコーチが発する単語を聞き取って、自分のなかで整理して使い分けていきました。サッカー用語も多く、端的でわかりやすかったことは助かりましたね。

 たとえば当時、よく発した言葉で言えば、前を見ろという『ルックフォワード』。DFに対しては、『ライトショルダー』『レフトショルダー』という言葉で指示を出しました。要するにどちらの背後にいるかってことなんですよね。これはなるほどなって思いました。

 あとは、『クリア』という言葉はなくて、『アウェイ』と言っていたのも印象的でしたね。今でこそ、国内でもGKがキャッチする時には『キーパー』って叫びますけど、当時は『OK』とかだったので、日本でもさらにサッカー用語が増えたらいいですよね」

 余談になるが、2003年にデンマークのノアシェランに移籍した時にはコーチがデンマーク語で書かれた単語帳を用意してくれて、それを見て必死に覚えたという。そんな川口の脳裏に強烈なインパクトを残しているのが、練習の強度だった。

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