川口能活が若手GKの海外挑戦に「僕のマネをしてほしくない」と言う理由 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

 日本代表のユニフォームをまとい世界の強豪と戦うようになったことで、欧州でのプレーを夢見るようになっていった。いつか訪れるその日のために、語学の勉強も始めていた。

「ただ、当たり前ですけど、今ほど情報というものがなかったんです。だから、移籍のタイミングや、行く先のチームの状況を知る機会や手段がなかった」

 川口がイングランドに降り立ったときには、すでに新シーズンは開幕していた。「今思えば、大ギャンブルですよね」と、本人は振り返る。

「キャンプも一緒にできないわけですから、非常に難しい状況ですよね。いくら代表やJリーグでの実績があったとはいえ、すでに公式戦が始まっているので、自分が合流した時点でレギュラーではないわけですから。ただ、そこはシーズン途中に行っても、レギュラーを奪えるだろうという気持ちで行動に移したのは事実です」

 当時の川口が抱いていた「自信」が示すように、すぐにピッチに立つことはできた。記録をさかのぼれば、ポーツマスでのデビュー戦は11月3日のチャンピオンシップ第8節・対シェフィールド・ウェンズデイ戦。移籍からわずか2週間程度で、ゴールマウスを守ったことになる。ただ、そのまま正位置確保とはいかなかった。

 川口がまず戸惑ったのは、サッカーそのもののスタイルの違いだった。

「すでに代表でプレーしていて、いろいろな国のチームと対戦していたとはいえ、イングランドのスタイルは想像していたものとだいぶ違いました。当時のイングランドは、どちらかというとゴール前が戦いの場になる。それまで代表やJリーグだと、中盤の攻防が多く、ゴールと離れたところでの戦いが多かったんです。

 プレミアリーグであれば、また違ったのかもしれないですけど、下部リーグになればなるほどゴール前での戦いが多くなる。自分としてはゴール前にスペースがあるなかで勝負してきたGKだったので、そのスタイルの違いに戸惑ったことを覚えています」

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