日本サッカーは名FKキッカーが絶滅の危機。元祖名手・木村和司の嘆き (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

高校、大学までは無名。プロになって大成した選手たち>>

――木村さんにとって、日本のなかで歴代もっとも優れたキッカーは誰かと問われたら誰を挙げますか?

「それはやっぱり中村俊輔だろうな。FKに関しては、いまだって誰も俊輔には敵わないと思う」

日本で中村俊輔を超える名キッカーはまだ現れていない日本で中村俊輔を超える名キッカーはまだ現れていない――横浜FMの監督時代に直に彼を見てきたと思いますが、やはり別格ですか?

「横浜FMの監督時代は、俊輔の練習をよく見てた。いろんなボールを蹴り分けられて、大したもんだと思ったよ。あいつも相当な数蹴ってたわ。それでもワシらの時代と比べると少ないと思う。ただ、俊輔でもあれだけ蹴っているんだから、ほかの若い選手ももっと練習しろと思うよな」

――中村選手も練習の虫というのは、よく聞く話ですね。

「FKは基本的に、やれば蹴れるようになる。やらんだけよ。いまの選手だってやれば誰だって蹴れると思う。ただ、いまの時代コンディションの問題で、居残り練習はもう監督も嫌がるんだろうけど。それでも蹴らんのはもったいない」

――中村選手と言えば日本代表の10番というイメージが強いですが、木村さんや名波浩さんなど、日本代表の10番はそのまま日本のFKの名手の歴史でもありましたね。

「やっぱりキッカーを任せてもらうためには、チームで認めてもらう必要がある。それは、蹴って失敗しても文句を言われんようなヤツよ。日本の10番はまさにその象徴だったと思う。蹴らせてもらうワシらには、それだけ責任感があった。ワシなんかは文句言われんようによう練習した。そういうのを見ていると周りも『しょうがねえな』ってなるんよ。『外れてもええか』って」

――大きな責任もあったと思いますが、同時に自信もありました?

「自信はあった。それだけ練習しとったから。FKが3本あったら絶対に1本は決めたると思うとったわ。試合でそう何本もええところで蹴れるわけじゃない。だからあの頃は、それくらい決める自信を持っとった」

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