2020.06.24

三浦泰年はドーハのイラク戦で思った。
マリーシアを知る自分を出せ

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 藤巻剛●撮影 photo by Fujimaki Goh

 呼ばれたのは三浦でも北澤でもなく、武田修宏だった。中山との交代になったが、中盤ではなく、前線の選手を入れ替えた采配を見て、三浦は「オフトは欧州の監督だな」とあらためて感じたという。

「ブラジルだと、あの時間、守備的なMFか、センターバックを入れる。でも、オフトは前で走れなくなった選手を入れ替えて前で守備をさせる選択をした。それは欧州的な発想なんです。僕は、ブラジル留学していたので時間の使い方を学んでいた。相手ともめたり、大袈裟に痛がったり、倒れたり、みんな南米のそういうプレーを嫌うけど、マリーシア(狡猾さ)は勝つためには必要なこと。それをあのチームで知っていたのはカリオカと僕とカズだけだった。だから、自分を使ってほしかった」

 フレッシュな武田は前線で動き回った。

 後半44分、ラモスからのリターンを受けた武田は右サイドをドリブルして上がり、キープせずに、そのままゴール前にセンタリングを上げた。

「何やってんだ」

 ベンチに座っていた三浦は立ち上がり、憮然とした表情で武田に視線を送った。

「あの時間帯で、あんなに簡単にセンタリングを上げるのは信じられなかった。あそこは絶対にキープして、時間を使うべきところ。そういう選択ができる選手じゃなきゃいけない。タケには申し訳ないけど、僕が監督だったら『お前はプロじゃない。素人だ』と言ってしまったかもしれない。大事な国際試合で大きな判断ミスをすれば、勝てたはずの試合も勝てないので」

 武田のセンタリングは精度が足りず、ボックス内に入ったカズに届かなかった。流れたボールはイラクに渡ったが、森保一が詰めてボールを奪い返した。武田のミスを帳消しにしたのだ。森保は、すぐにラモスにボールを預けた。

 後半44分、この時、ピッチの選手もベンチの三浦も、そしてオフトも「勝てる」と信じていた。

(つづく)

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