底が知れん! 冨安健洋はレベルが上がるほど潜在能力が引き出される (4ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 とはいえ、当時20歳の冨安にとっては、A代表として初めて臨む公式戦。それも、4年に一度のアジア王者を決める重要なタイトルマッチである。それなりの壁にぶつかったとしても不思議はなかった。

 ところが、冨安はこの大会でもU-20ワールドカップ同様、初戦こそ落ち着かない一面を見せたものの(この試合だけは、ボランチでの出場だった)、2試合目以降は、みるみるトップレベルのスピードにも慣れていった。

 DFラインの背後をカバー。あるいは、相手の前に出てパスカット。試合を重ねるごとに、冨安は相手の先手を取る機会を増やし、安定したプレーを披露した。

 アジアの強豪国が一堂に会する大会は、アジア限定の大会と言えども、ヨーロッパのメディアやクラブ関係者も多数訪れる。まして、この年は中東での開催だったこともあり、利便性のよさも手伝って注目度はさらに高まっていた。

 そんな大会で、足元の技術にも優れた身長188cmの、しかも、まだ20歳のDFが日本に現れたのである。ヨーロッパのスカウトたちが放っておかないのも当然だった。

 2019年夏、冨安がわずか1年半でベルギーに別れを告げ、イタリアへ戦いの場を移したことはすでに記したが、そこにアジアカップでの活躍が影響していたことは想像に難くない。

 日本人選手としては恵まれた体格の冨安は、それでいて、大柄な選手にありがちな鈍重さはなく、キックの精度も高い。左右両足を同等に扱い、長短のパスを正確に蹴り分ける技術は、小柄なテクニシャンにも見劣らないほどだ。

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