久保建英の変化。「バルサ流」をかなぐり捨てチームメイトを驚愕させた (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 試合後の会見で、長谷川監督はやや興奮を帯びた口調で言っている。

「建英は、すべての面で成長したと思います。精神的にも外に出た(横浜FMへの移籍)ことで、子どものメンタルから大人のメンタルになった。昨シーズンまでは、ボールを奪われ、倒されていたりしたところで、(今季は)フィジカル的に強さも見せている。あらめて、この年代の1年の成長のすごさを感じているところで。(ガンバ大阪時代に指導した)堂安律がヨーロッパに行く前のレベルには、すでに到達していると思います。これから、ヨーロッパのクラブから声がかかるんじゃないかと」

 それは、予言的だった。ただ、その成長曲線は思った以上だったのではないか。

 同年4月には、久保は首位を行く東京の主力というより、エースに君臨していた。5月には日本代表に選出され、6月にはコパ・アメリカに出場した代表の主軸となり、18歳でレアル・マドリード移籍を決めた。たった、半年で劇的な変化を遂げたのだ。

 17歳から18歳で、これほどの飛躍を遂げた選手は過去にいない。

 久保のすさまじさは、"変異力"だろう。それは、成長という表現を越えている。同種の個体だが、違った形質が表われ、環境に適応し、その力を最大限に発揮できるのだ。

 久保は幼い頃、バルサ仕込みのサッカーを身につけた。ボールプレーが基本で、相手を引き回すためのオートマチズム。そのこだわりはあっただろう。

 しかし川崎との開幕戦、久保は"バルサ流"をかなぐり捨てていた。バルサで身に付けた技術は生きる糧だが、その戦い方はいくら追い求めても、手に入らない。どんなシステム、戦術であっても、ピッチに立ってプレーすることに、彼は挑んでいた。そのために必要な肉体を仕上げ、スピードさえも上がっていたのだ。

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