2020.06.08

「日本代表に誇りを持った」
サッカーの醍醐味が凝縮していた劇的な一戦

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 しかし、後半20分から試合は急転する。ベルギーは、長身巨躯のマルアン・フェライニ、爆発的走力のあるナセル・シャドリを2枚同時投入。日本を浮足立たせた。

「タクティカルなゲームではなかったね。我々は0-2でリードされて、解決策を探す必要があった。そこで、状況を変えられるのは、ベンチでの采配だったと思う。ただ、戦術うんぬんより選手個々の力量に委ねられていた」

 ベルギーのスペイン人指揮官、ロベルト・マルティネスはそう明かしている。机上の戦術で語れない。運命のようなものが、ピッチで蠢(うごめ)いていた。

 日本は、単純な高さとスピードにたじろぐ。クロスの対応に苦慮し、CKが続いた。後半24分、CKにGK川島永嗣が飛び出して弾くが、クリアはクリアにならない。エリア内で浮き球になったボールを、最後はヤン・フェルトンゲンにヘディングされ、川島の頭上を無情にも越えていった。

 さらに5分後、再びCKをクリアするも拾われ、左サイドをアザールに破られ、折り返しをフェライニに頭で叩き込まれた。

「日本はとてもいいチームだった。戦術的にとても整然としていた。我々は容易にスペースを見つけられなかった」

 クルトワが試合後に明かしたように、日本は組織ではよく守ったが、パワープレーに押し切られ、同点に追いつかれた。

 日本は劣勢に立った。しかし後半36分、交代出場したMF本田圭佑が再び、希望の灯をともす。右サイドでタメを作り、インサイドに走り込んで左シュートを浴びせる。そして、アディショナルタイムには、FKからぶれ球でクルトワを脅かした。

 そうして、最後のプレーになるはずだった左CKで、運命は転ぶ。