大野忍は、なぜ通算200ゴールまで
あと18なのに引退を決意したのか?

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 それでも引退を決めた要因のひとつが、苦楽をともにしてきた仲間が次々にピッチを去り、「この仲間と(タイトルを)獲りたい、この仲間となら獲れるっていう想いが強かった分、やりたい仲間がいなくなってしまった」ことだった。

 大野は最後の2シーズンをノジマステラ神奈川相模原でプレーした。この移籍は驚きだった。大野は日テレ・ベレーザからINAC神戸レオネッサへ移籍し、そこから世界ナンバー1とも称されるオリンピック・リヨン(フランス)にも在籍した。なでしこジャパンとしての知名度も高く、その経験と技術の高さは誰もが認めるところだ。

 ノジマステラは若い選手が多く、これから成長していく選手たちが揃っていて、さらにはよく走る粘りのサッカーを身上としていた。走るトレーニングが苦手な大野が、まさかこのチームに飛び込むとは信じがたかったのだ。ところが試合では、サイドバックから全力でビルドアップする大野の姿があった。当然、世代問題だけでなく、多くのギャップは覚悟の上だったが、大野はさらに新しい扉を開いていた。

「本当にいろいろたいへんでしたけど、ノジマに行ってよかったですよ。努力は実を結ぶ。だって走るのとか得意じゃなかったでしょ?そんなウチでも走れるんですから。走れたんですから(笑)。当時の菅野(将晃)監督には感謝です」

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る