大野忍は、なぜ通算200ゴールまであと18なのに引退を決意したのか? (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

「最もうれしかったこと」として大野が振り返った2011年のFIFA女子ワールドカップドイツ大会での優勝に続く、15年カナダ大会では2大会連続の決勝にコマを進めた。大野にとって「特別な大会」であるオリンピックでも、なでしこジャパンの快挙はめざましかった。12年のロンドンオリンピックでは、史上初となる銀メダルを手にした。それまでの日本女子サッカーはアジア制覇にも手が届かず、世界との差をまざまざと見せつけられていた。その歴史を思えば、大野が走り抜けた10年は激動以外の何物でもない。

 そんな大野も36歳を迎えた。たしかに、体力的には衰えもあるだろう。しかし、それ以上に彼女には、経験と戦術眼がある。個人として目標に掲げていた通算200ゴールまであと18というところにいた大野は、なぜこのタイミングで引退を決めたのか。

「昨年の10月ぐらいから(引退を)考えることが多くなりました。練習中に指導者目線というか、そうなってしまう自分がいて。よく指導者兼選手ってあると思うんですけど、自分はそれをやりたくなかった」

 目標としてその存在を追い続けていた澤さん、そして同世代でありながら「それはもう絶大な影響を受けた」という宮間あやには、いち早く相談したという。2人からは「(プレー)できる場所があるなら続けた方がいい」とも言われ、なかなか決断ができなかった。

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