大野忍は、なぜ通算200ゴールまであと18なのに引退を決意したのか?

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

「自分自身がサッカーを楽しむことで周りに(サッカーの魅力が)伝わればいい」――。

 苦しいときこそ笑顔を絶やさず、1999年からトップリーグ、海外リーグで活躍した大野忍の引退会見は"しの"(大野の愛称)らしい涙を封印した笑顔あふれるものだった。

ムードメーカーの大野忍らしく、最後まで笑顔が絶えない引退会見となったムードメーカーの大野忍らしく、最後まで笑顔が絶えない引退会見となった 時折、ジョークを交えながら、メディアひとり一人の質問に丁寧に答えていく大野。思い出のゴールを聞かれ、「想定してました(笑)」と挙げたのは、史上初のオリンピック銀メダルを獲得した2012年ロンドンオリンピック準々決勝、ブラジル戦のゴールだった。大野の持ち味でもある足元の技が光るステップから左足を振り抜いたファインゴールは今でも鮮明に思い出すことができる。

 なでしこジャパンのデビューは2003年。最初の数年は、アジアの戦いでも格下試合要員だった。複数得点を決めても相手は格下。重要な試合での出番はなく、ベンチを温め続けた。当時、そのチームの中心を担っていた澤穂希さんは、大野にとって憧れの存在であり、目標であり、後にかけがえのないチームメイトになった。

 大野が主力に食い込み始めてからの10年は激動だった。

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