柱谷哲二が語るドーハの悲劇。
イラク戦で投入してほしかった選手の名は

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 柱谷とラモスは、電光掲示板の時計を確認し、レフェリーを見た。

 レフェリーが「ワンモアプレー」と言い、柱谷は次がラストであることを確認した。次にボックス内の守備を確認した。中央を締めており、ボールが入っても跳ね返せる自信があった。イラクのCKがショートコーナーになった。「カズ行け!」と叫んだ刹那、そこから柱谷は地獄に突き落とされたのである。

日本中がショックを受けたドーハの悲劇。キャプテンの柱谷哲二も号泣した photo by Getty Images日本中がショックを受けたドーハの悲劇。キャプテンの柱谷哲二も号泣した photo by Getty Images「もう真っ白だよね。同点にされてから、まだ時間があるとか言われたけど、できねえよ、そんなもん(苦笑)。悔しくて泣いて、周囲もみんなそんな状態だった。ただ、サポーターに挨拶しないといけないと思い、ひとりで行くかって思ったらみんながついて来てくれた。この時、キャプテンやってよかった。みんなに信頼されていたんだなって思ったね」

 松永成立はバスの中でも泣き続け、部屋に戻ると森保一もベッドで泣いていた。柱谷も、頭の中で最後の失点シーンが何度もリプレイされ、涙した。しばらくすると、ホテル内からW杯出場を決めた韓国の選手団の歓喜の声が聞こえてきた。

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