柱谷哲二が語るドーハの悲劇。
イラク戦で投入してほしかった選手の名は

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 韓国に勝ってもW杯に行けるわけではない。まだ何も決まっていないのに、決まったかのように泣いて喜ぶ選手たちに、ラモスは違和感を覚えたのだろう。その日からイラク戦までメディアはもちろん、チームメイトも遠ざけるようになった。

「イラク戦までの2日間、ラモスはほとんどしゃべらなかった。なんで話をしないのかなって不思議だったけどね。ベンチにひとりで座って、独りごとを言っていた。集中していたのか、ビビっていたのかわからないけど、俺は普通にしていればいいのにって思った。そういう行動をとることでイラク戦が特別な試合だとみんな意識してしまうし、実際そうなった感があったからね」

 柱谷は大事な試合だと理解していたが、あくまで最終予選の1試合というスタンスで、余計なプレッシャーを自ら掛ける必要がないと思っていたのだ。

 イラク戦のキックオフ前、柱谷は、それまで中2日で試合をこなしてきた疲れが蓄積されたせいか、疲労困憊だった。

「試合の前半が始まる前にもう後半のような感じで、体が重かった」

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