柱谷哲二の最重要ミッションは
「監督と選手の仲を取り持つこと」だった

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 だが、ピッチ上では選手との摩擦が続いていた。

 オランダ合宿は、8月に開催されるダイナスティカップ(現在のE-1サッカー選手権の前身)のための合宿だったが、チーム状態としてはまだまだだった。オフトが言うスモールフィールドやトライアングルができておらず、またサイド攻撃を徹底したが、ラモスは中央突破にこだわり、オフトの言うことを聞かなかった。

 オランダでは3試合が組まれたが、オフトの隣にいた柱谷は気が気でなかった。ラモスの奔放なプレーに指揮官が鬼の形相になり、タバコを吸う回数が増えた。その姿を見て、ラモスよりもオフトが先に爆発するのではないかと本気で心配した。

「オフトはずっとワイドって言うけど、ラモスは相変わらず中央突破ばかり。トライアングルで崩せと言っているのにスクエアパスが出ると、『また出たぞ』ってもうめちゃくちゃ機嫌が悪くなる。この時はラモスだけじゃなく、DFのラインコントロールがうまくいかず、『もっとコンパクトにしろ』と井原たちにも怒鳴っていた。まあ井原はやろうとしてうまくできていないからまだいいけど、ラモスはオフトの言うことをまったくやろうとしない。このままじゃ本当にマズイことになるって思いましたね」

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