柱谷哲二の最重要ミッションは「監督と選手の仲を取り持つこと」だった (5ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

「みんなは、この監督どうなんだ、どういうことをするのかって身構えていたし、オフトはこいつらどう反応するのかって、お互いに睨み合っている状態だった」

オフトジャパンのキャプテン就任直後のゲームで、ロベルト・バッジョとペナント交換する柱谷哲二 photo by AFLOオフトジャパンのキャプテン就任直後のゲームで、ロベルト・バッジョとペナント交換する柱谷哲二 photo by AFLO 柱谷は、両者の緊張状態から一歩引いてチームを俯瞰していた。監督からキャプテンを任された以上、監督が求めるサッカーをより早く理解し、それをチームにしっかりと落とし込んでいきたいと思っていたのだ。

 それに集中できるチャンスがやってきた。

 7月、日本代表はオランダ遠征に出発した。柱谷はケガのため試合に出場することはなかった。だが、ケガの巧妙で逆にオフトと話をする時間が増えた。

 この時から柱谷はオフトに呼ばれ、清雲栄純コーチとともに3人でミーティングをするようになった。オフトが好きなブラックジャックをやりながら、チーム内の状況などを説明し、試合ではベンチでオフトの横に座って実戦的な指示を聞きながら、戦術的な説明を受けた。

「この時、オフトの人間性、そしてサッカーについてだいぶ理解が深まりました。オフトは、意外と懐が広くて、たとえばオランダで試合が終わったあと、クラブハウスでの歓談会でビールを飲むのを禁止しなかった。横山(兼三/前監督)さんの時代は禁酒だったし、オフトも合宿では酒はNGだったので、なぜ今回はいいのかって聞いたら『これがオランダのスタイルだ』って。『オランダの下町のクラブは試合後にビールを飲んでサポーターと話をして帰るんだ。こういうのも覚えておいたほうがいいぞ』って言うんです。すべて管理ではなく、抜くところもあるんだなって、ちょっと意外なところが見えておもしろかった」

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