信じがたい惨敗を喫したU-23日本代表に、微かに見えたふたつの「光」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 だが、相馬の高速クロスがゴール前に入りながら、誰も飛び込んでいなかった前半11分のシーンが示すように、チーム全体として、そこを突破口にしようとする共通意識は薄かった。田中駿は「勇紀くんのところから何本かいいクロスが上がっていたんで、それがいけたんなら、その形をチームとしてもっと作ってもよかったんかなと思う」と振り返る。

 そして、チャンスを生かせないまま迎えた前半ロスタイム。ボランチのMF田中碧(川崎フロンターレ)がルーズボールの競り合いで足を伸ばした際、相手選手の足首を踏みつける形となり、VARによる判定で退場に。日本は前の2試合に続き、またしてもVARに泣かされることとなった。

 それでも、10人になった日本は、後半27分にFW小川航基(ジュビロ磐田)がミドルシュートを決め、先制。後半開始から4-4-1へとシステムを変更し、「全員でしっかり守備をしてカウンター」(田中駿)という狙いを全員で確認して臨むなか、「(得点は)自分たちで狙った形ではなかった」(田中駿)とはいえ、今大会での悪い流れが、ようやく断ち切られたかに思われた。

 しかし、その後は守勢に回る時間が長くなり、途中出場のFWハリド・マジードにドリブルでのペナルティーエリア進入を許し、PKを与えてしまう。

 同点に追いつかれたあとは、どうにかカタールの猛攻をしのいだものの、結局は勝利を手にすることができなかった。

「退場者を出してからのほうが、個人が多く走っていたんで、それを前半からもっとアグレッシブにやっていれば、結果は変わったかなと思う」

 田中駿がそう語ったように、日本はひとり少なくなかった後半のほうが、前線の動きが活発になり、意外なほど攻撃は活性化された。本来ならマイナス要素になりかねないものがプラスに働く、うれしい誤算だった。

 ところが、先制したのも束の間、3試合連続となるPK献上。不運もあったが、それも含めて、グループリーグ全体を通してのチグハグな流れはこの試合でも続き、日本は最後までそれに抗うことができなかった。

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