2020.01.14

勝負勘が必要なのは選手より森保監督。
任命した田嶋会長にも責任あり

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 これは森保監督が、E-1選手権(昨年12月)のメンバー発表記者会見の席上で述べた言葉だが、選手にユーティリティ性を求めながら、実際にこの大会で、日本が戦術的な交代をしたのは1回だけだった。布陣も変えなかった。さらに言えば、初戦の中国戦、香港戦では交代枠もフルに使うことができなかった。

 選手に求めることに、自分がついていくことができない皮肉な状況に陥っていた。実際にはもっと前から、そうした傾向は見えていたが、今回のアジアU‐23選手権でも、森保監督は同じ姿をさらすことになった。五輪本大会やW杯で期待が持てそうもないことは、もはや明白になっている。

 シリア戦。負ければグループリーグ敗退なのだから、サウジアラビア戦より状況はもっと切羽詰まっていた。さすがにバックの枚数を削り、攻撃的な4バックに切り替えるだろうと思いきや、最後まで守備的な3バック(3-4-2-1)で戦った。

 正確には終盤、バックの枚数を削った。終盤、長身のDF立田悠悟(清水エスパルス)をゴール前に残して戦ったが、明確な変更はこれのみ。選手に求める「複数ポジションをこなす力」の実態がこれだとすれば、情けない。最後の時間帯の勝負勘を培ってほしいと選手によく言えたものだ。

 とはいえ、これまでの森保采配を振り返れば、それが特段、驚くべき出来事だったかと言えばノーだ。その監督力は、就任した瞬間から危惧されていた。試合をこなすごとに決定的になっていったという感じだ。

 サッカーの中身はもちろんだが、日本語できちんと説明できない点になにより物足りなさを覚えた。原理原則、連係連動、臨機応変......。出てくるのは抽象的な言葉ばかり。サッカー好きの心に響くことは、これまでひと言も発していないと断言したくなる。サッカー監督に不可欠とされる言語能力に欠けることが最大の不安要素だった。

 田嶋幸三サッカー協会会長は、日本人監督として断トツの実績を残した点を代表監督に推した理由に挙げた。しかし森保監督がサンフレッチェ広島で実践したサッカーは、少なくとも西野ジャパンがロシアW杯で披露したスタイルとは違っていた。そして、その西野ジャパンのサッカーを「ああいうサッカーが日本には合っている」と田嶋会長は述べている。氏がハリルホジッチを解任した理由も「ああいう」サッカーではなかったからだろう。森保式3バックサッカーも「ああいう」サッカーとは一線を画している。