勝負勘が必要なのは選手より森保監督。
任命した田嶋会長にも責任あり

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 サッカーにおける良し悪しを、すべて結果で判断することには反対だ。勝ち負けのみで監督続投か否かを論じることも同様。結果に対して運が3割ほど影響を及ぼすと言われるサッカーにおいて、それはナンセンスだ。まさかの勝利があるのと同じように、まさかの敗戦も存在する。

 アジアU‐23選手権におけるサウジアラビア戦、シリア戦もその部類に入るだろう。日本に運がもう少しあれば勝てたかもしれない試合だった。しかしいずれも、内容は抜群によかったけれど不運に泣いた試合ではない。内容も悪かったし、今後に可能性を見出すこともできない敗戦だった。このまま先に進むことは危険だとばかりに、不運という要素を投下し、日本サッカーのあるべき姿を明示することにしたサッカーの神に、むしろ感謝したくなる気持ちでいっぱいだ。

シリアに2-1で敗れ、グループリーグ敗退が決まったU‐23日本代表シリアに2-1で敗れ、グループリーグ敗退が決まったU‐23日本代表「相手のカウンターを止める。最後の時間帯で苦しくなったとき、しっかりしのぐということは試合前から言っていたこと。勝負勘というものを若い選手に培ってほしい」

 シリアに2-1で敗れた後、インタビューにそう答えていた森保一監督だが、その言葉を向けたくなるのは森保監督自身だ。勝負勘を培うべきは、若い選手ではなく51歳の監督である。

 サウジアラビア戦後、筆者は「見られているのは選手というより監督。選手のミスを残念がるのではなく、自分の立場を心配した方がいい」と記したが、シリアにまさかの敗戦を喫しても、残念ながら監督に、その意識は芽生えていなかった。

 サウジアラビア戦で森保監督が行なった2人目、3人目の交代はロスタイムにズレ込んだ。遅すぎる交代であることは誰の目にも明白だった。布陣も変更しなかった。守備的な3バック(3-4-2-1)を敷いている強者が、同点のまま後半なかばを迎えれば、バックの枚数を減らし、4-2-3-1などの4バックに転じるのが常道だ。

「3バックも4バックもできるようにシミュレーションしています。ディフェンスと中盤、中盤とサイド、ディフェンスとサイド、シャドーや攻撃的な中盤もできる、1つのポジションだけではなく複数のポジションができる選手が揃っていると思いますので、そうした可能性を探りながら準備したいと思います」

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