韓国より「強度で劣る」のには理由がある。
森保Jの本質的な問題

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 しかし、相手の韓国も森保ジャパンのサッカーをスカウティングしているのだ。実際、韓国代表のポルトガル人コーチは、過去2試合、筆者の真横で日本の戦いぶりを注視していたのだった。

 このコーチは日本の戦いぶりを見て、パウロ・ベント監督に何を進言するつもりなのか。興味を抱きながら、その姿をチラチラ眺めながら観戦していた。そしてこの日、日本戦の開始早々から繰り出した韓国のサッカーを見て、「そりゃそうだろうな」と、その出方に思わず納得させられた。

 韓国は、日本の3バックの脇、ウィングバック(WB)の後ろで構える4-3-3の両ウイング、ナ・サンホ(左)、キム・インソン(右)目掛けて、ラフなボールをボカンボカンと蹴り込んできたのである。日本のWB、遠藤渓太(左/横浜F・マリノス)と橋岡大樹(右/浦和レッズ)を最終ライン付近まで押し下げ、3バックを5バックにしてしまえ――との戦法は、欧州で守備的な3バックが衰退した経緯をたどれば、定石と言っていい。イロハのイになる。

 美しくはない戦法だが、森保式3バックには効果は抜群だった。これでピッチには、韓国の3FWに、日本が5バックで対応する図が鮮明に描かれることになった。従来の4-2-3-1なら、相手の3FWに対して4人で対応するところを、1人多い5人で対応すれば、その前のエリアは5人(日本)対7人(韓国)になる。日本の最終ラインで余剰が2人あれば、皺寄せはその前方にいく。

 最終ラインでボールを跳ね返しても、相手に拾われる確率が高いのである。この関係(5対7)は、立ち上がりから続いた。しかし、森保監督は会見で「戦術的に後手を踏んだとは思わない」と、強気を張り、これを認めなかった。

 球際が弱いとか、強度が足りないとか、日韓戦を戦う心構えができていないとか、いろいろと言いたくなる気持ちはわかるが、そう見えてしまった原因の多くは、この5対7の関係に起因する。ボールを奪えない最大の理由は、選手の気合い不足にあったわけではない。競り合いで強度が足りないように見えてしまったのも、数的不利に基づく、その非効率性に原因がある。

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