なでしこジャパンは自信を取り戻した。E-1優勝で東京五輪へ弾み (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 今回は、いつもであれば守備を統率する熊谷紗希(オリンピック・リヨン)や鮫島彩(INAC神戸レオネッサ)が不在のなか、GK山下杏也加(日テレ・ベレーザ)がポジションについて最終ラインに細かくリクエストを出し、全3試合でセンターバックを務めた南萌華(浦和レッズレディース)はそれを懸命にコントロールした。ミスも多々あった南だが、試合ごとに変わるメンバーと最終ラインを作り上げた結果、日本は無失点で大会を終えた。

 大会MVPを獲得して「自分が値するかわからないけど、周りに支えられていただけた賞です」と語った南の言葉に偽りはない。日本の守備陣を代表して南に与えられたものと捉えてもいいのではないだろうか。今回はほとんどなかったが、今後はワールドカップでも散々やられた2列目から飛び出してくる選手をいかに止めるか。ここがクリアできれば本物だ。

 今回の4大会ぶりの優勝を監督、選手は素直に喜んでいた。そこにはワールドカップベスト16敗退という苦い経験がこの半年の間、なでしこジャパンに暗い影を落としていたからだ。

 ワールドカップ敗退につながった課題が克服された訳ではないうえに、招集メンバーがベストとは言い難く、単純な比較で成長の度合いを測ることは難しい。けれど決定的な違いがある。"悪くない状況で勝ち切れなかった"ワールドカップと、"よくない状況下で優勝をもぎ取った"E-1選手権――。招集が叶わなかった熊谷をはじめ、途中離脱の岩渕、長谷川という主軸不在での優勝だ。

「同じことをやっていては東京オリンピックで優勝はできない」と籾木は語った。一度はどん底に突き落とされたからこそ、これまで積み上げてきたものを一つひとつを拾い上げては磨き直してきた。オリンピック前の最後の公式大会は追加招集をせず20名で戦い抜く激戦であったが、そこでつかみ取った優勝は自信を取り戻す第一歩に、そして東京オリンピックへ向けて、これ以上ない後押しになったのではないだろうか。

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