森保ジャパン、E-1で香港に完勝も物足りないデータが複数あり (5ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 とりわけ気になったのは、76分の攻撃シーンだ。その時間帯、日本は田中駿のボール奪取を皮切りに、約1分30秒に渡って計41本のパスをつなぐ遅攻を見せながら、最後に田中駿がボールロスト。一方的にボールを支配しながら、チャンスをつくれずにパスだけを回したそのシーンこそ、日本の攻撃が停滞していた証左だろう。

 もちろん4点のアドバンテージで迎えたことで、選手たちが攻撃の手を緩めてしまうのは仕方のないところでもある。しかし、そんな緩んだ状況をコーチングエリアから見つめていた森保監督は、とくに攻撃を活性化させようという動きは見せなかった。

 67分に畠中槙之輔を3バックのセンターに投入し、田中駿を本職のボランチに配置した采配は、田中駿個人のテスト起用にほかならない。また、2枚目の交代カードは84分。残り10分を切るなか、1トップの小川に代えて上田を投入したことから判断すると、さらにゴールを目指すための選手交代だったと思われる。

 初戦に続いて交代カードを1枚残した点も疑問は残るが、5点リードする試合の終了間際に2枚目のカードを切るなら、追加点を狙うよりも、むしろゲームの終わらせ方を意識した選手交代があって然るべき。しかし指揮官は、この試合でも同じメンバーでできるだけ長くプレーさせたうえで、最後まで同じ調子で攻め続けることを優先した。

 初戦に続き、自らのベンチワークで試合の流れを変えたり、ゲームを終わらせたりする采配を試さなかった森保監督。さすがに格下相手のW杯アジア2次予選で、それが致命傷となることはないだろう。だが、来夏の五輪本番は短期決戦であり、決勝トーナメントは一発勝負である点を考えると、できるだけ早急に自らの采配テストを行なわなければ、再びアジアカップと同じ過ちを繰り返してしまう可能性は高い。

 そういう意味でも、タイトルをかけた18日の韓国との一戦は、優勝を目指すことを公言する森保監督のベンチワークに注目が集まる。

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