良くも悪くも森保式サッカーの真骨頂。
「格下」中国戦の勝因とその限界

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 その結果だろう。日本が終盤、再び中国の攻勢を許すことになったのは。後半45分の失点には、そうした意味で必然を感じる。

 この試合はよくも悪くも、森保監督の真骨頂を見た試合だった。5バックになりやすい3バック(5バックになりにくい3バックも存在する)で守備的に臨み、かねてから唱える連係、連動するプレーで先制点を奪う。だが、そうは言ってもそのサッカーは引いて構えるサッカーなので、うっかりしていると能力の低い相手にも、受けて立つことになる。セットプレーで追加点を奪うことに成功しても、慎重になるあまり、交代が遅れ、それが災いし相手にゴールを許してしまう。

 どう見ても森保監督は守備的思考、かつ慎重な人だ。そうしたベースの中で、毎度唱える、連係、連動するプレー(佐々木→上田→森島→鈴木)が飛び出す。中国人記者の質問に対し「どっちが勝ってもおかしくない試合だった」と述べた森保監督だが、満足度は思いのほか、高いのではないだろうか。

 だが、あえて言わせてもらえば、先制点のような連係、連動は、相手が中国だからこそ実現したプレーだ。出るところに出れば、逆に危ないプレーになる。サイドアタッカーは両サイドに各1人しかいないので、連係、連動に絡みにくい。攻撃は中央に寄りがちだ。そこで技術的に高度な連係、連動を繰り出せば、リスクもその分、上昇する。逆襲をされやすくなる。

 実は、5バックになりやすい森保式3バックと、連係、連動との相性は決して良好とは言えないのだ。この試合を成功体験としてポジティブに捉えることに、懐疑的にならざるを得ないのである。

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