良くも悪くも森保式サッカーの真骨頂。「格下」中国戦の勝因とその限界 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 しかし、雲行きは徐々に変わっていく。14分、左ウイングバックとして起用された遠藤渓太(横浜FM)が、左サイドから頑張って、際どい折り返しを中央に送る。17分には畠中槙之輔(横浜FM)の放ったシュートが、中国のゴールポストを直撃した。

 中国はこのあたりから慌て始めた。27分、中国のキャプテンであるメイ・ファンがラフプレーによりイエローカードを提示されたシーンなどはその象徴。自分たちのサッカーに自信が持てなくなってきた感じだった。おのずと日本は5バックになる時間が減り、平均値で上回る個人の力を発揮しやすい状況になった。

 そして29分、プレーが「連係、連動」した。佐々木翔(サンフレッチェ広島/3バックの左)からボールを受けた1トップ上田が、脇に走り込んだ森島に、相手の意表をつくクイックパスを送ると、局面がパッと開けた。森島が逆サイドに展開すると、そこには鈴木がいた。日本の先制点は、その鈴木のクリーンシュートによってもたらされた。真ん中やや左から展開していく中で生まれた鮮やかなゴールだった。

 ところが、当初の勢いがすっかり失われ、体力勝負にしか活路を見出せなくなった中国に対し、日本もほどなくすると、森保式3バックの地が出始め、勢いを失った。そして後半が始まると、気を取り直したのか、中国が再びペースを握る。5バックで構える日本陣内でプレーする時間が増えていく。後半8分には、ゴールに近い場所で左から右へと展開。右SBミン・ティアンが、ポスト直撃弾を放った。

 日本の追加点は、そんなよくない流れの中で生まれた。後半25分、セットプレーからのゴールだった。CKを三浦がヘッドで押し込み2-0とすると、中国は再び活気を失い、日本の勝利は揺るぎないものになった。

 森保一監督は試合後、「後半15分ぐらいからメンバー交代を考えていた」と述べた。交代は後半27分、鈴木を田川亨介(FC東京)に入れ替えたのが初めて。交代枠も2回しか使わなかった(もう1回は84分の橋岡大樹/浦和レッズ→相馬勇紀/鹿島アントラーズ)。その理由をこう続けた。「プレーがスムーズに行き出したところで新たな選手を入れることにためらいがあった」と。

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