ベレーザがアジア王座獲得。なでしこジャパンに与えるプラスの影響は (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 長谷川は、ユース年代から何度も対戦を重ねたことで、友人となった選手たちが仁川に多く、その選手たちから「ベレーザは強いチームだね」と言われたことで、「やってきたことは間違っていなかったと自信を持つことができた」という。

 一方、今大会で最終戦のハットトリックを含む4ゴールを挙げた田中は、一層気を引き締めたようだ。田中個人としてアジア勢と対戦するのは、なでしこジャパンとして戦った昨年8月のアジア競技大会以来。代表として対外試合をこなしてきたからこそ「もっとゴールへの迫力を持たせることが必要」(田中)と、自身への評価は厳しめだ。

 それでも代表としての国際経験に加えて、「国内では感じられないようなパワーやスピード感、プレッシャーをベレーザとして感じられたことがすごくよかった」と今後への期待感も滲んでいた。

 今大会で興味深かったのは、永田雅人監督が試合ごとに異なるメンバー構成で臨んだことだ。当然ながら主力選手はしっかりと起用するも、総力戦ということもあり、その配置・起用にも一戦一戦に明確な"挑戦"があった。とくに若い選手を積極的に使い、なおかつ質を落とすことなく展開させるトライは、永田監督ならではの信頼と我慢の采配だったと言える。

 初戦は後半の勝負どころで中央に若手の菅野奏音を投入、優勝を左右する首位の仁川との直接対決では松田紫野、下部組織のメニーナから後藤若葉を抜擢。最終戦でスタメン起用された伊藤彩羅は左サイドバック、左右サイドハーフと時間を追うごとに3つのポジションを担い、それぞれで効果的な動きを披露して、得点もマークした。指揮官の期待に大いに応えた。

 特筆すべきは第2戦の後藤の覚醒だ。本職のCBではなく、右サイドバックでの起用に前半は慌てた。スピードのある相手に有効なマークに行けず、オーバーラップのタイミングも見失っていた。心が折れるかと思いきや、後半に後藤のプレーが一変した。

「申し訳ない前半でした......。迷惑をかけちゃダメだって縮こまってしまって。でもその考え自体がマイナスに動いている。意図のあるミスだったらみんな声をかけてくれるので吹っ切れました」(後藤)

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